※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)
菫青石 cordierite
(Mg,Fe)2Al3(AlSi5O18) [戻る]
斜方晶系 二軸性(−,+),2Vx=70〜2Vz=80° α=1.522〜1.558 β=1.524〜1.574 γ=1.527〜1.578 γ-α=0.005〜0.018 屈折率・干渉色は,Feに富むものはやや高く,Fe>Mgのものは鉄菫青石(セカニナ石)という。
形態:高温の片麻岩やグラニュライトなどの広域変成岩中のものや火成岩中のものは他形粒状で石英と紛らわしい。泥質ホルンフェルスやパイロ変成岩(泥岩がマグマに取り込まれたブッカイトというもの)では,他形粒状のほかに,6角の花弁状双晶の斑状変晶をなしていることも多い。なお,ホルンフェルス中のものは周囲や割れ目から緑泥石化・セリサイト化していることが多く,結晶全体がその仮像になっていることもある。
色・多色性:通常はほとんど無色で多色性なし。まれにわずかに青みを帯び,淡青色⇔無色の多色性がある。
消光角:通常はへき開や結晶の伸び方向が認められず,定義されない。
へき開:認められない。
伸長:通常はへき開や結晶の伸び方向が認められず,定義されない。
双晶:広域変成岩や火成岩中のものは認められないことが多いが,接触変成岩(泥質ホルンフェルスやパイロ変成岩)中の斑状変晶は6角の花弁状双晶(3連の双晶)をなしている場合が多く,クロスニコルでは対向する双晶ドメインが消光する。
累帯構造:Mg⇔Feの置換があるが光学的には認められない。
産状 接触変成岩(泥質ホルンフェルスや,安山岩・玄武岩に取り込まれた泥岩のパイロ変成岩)中には他形粒状のほか,特徴的な6角の花弁状双晶の斑状変晶をなす場合も多い。なお,ホルンフェルス中のものは周囲や割れ目から緑泥石化・セリサイト化していることが多く,結晶全体がその仮像になっていることもある。 広域変成岩では高温の片麻岩やグラニュライトに,石英・長石類・黒雲母・ケイ線石・アルマンディン・ややFeに富む頑火輝石などとともに含まれる。 火成岩ではまれに副成分鉱物としてパーアルミナスな流紋岩〜安山岩・花こう岩中にケイ線石・アルマンディンなどに伴い見られる。 いずれの場合も他形粒状のものは,石英と見た感じや屈折率・干渉色が同じで紛らわしいが,アイソジャイアーの観察で区別は容易である。また,菫青石は時々,後退変成作用で周囲や割れ目に沿い,幾分,セリサイト化・緑泥石化している場合がある。 |
泥質ホルンフェルス中の菫青石 Cor1・Cor2・Cor3:菫青石,Ms:白雲母,Qz:石英,Fd:長石類,Bt:黒雲母 細かい石英・長石類・黒雲母(褐色)からなる基質中に斑状変晶をなす。クロスニコルでは特徴的な6花弁状の双晶が明瞭(消光状態で3つの双晶ドメイン(Cor1・Cor2・Cor3)が組み合っているのがわかる)。 このような泥質ホルンフェルス中の菫青石や紅柱石は後退変成作用で白雲母化しやすく,完全に白雲母化している場合もある。なお,菫青石はMgに富むため白雲母化と同時に緑泥石化していることも多い。 |
泥質ホルンフェルス中の菫青石の斑状変晶の後退変成作用による変質部分(拡大) Cor:菫青石,Ms:白雲母,Chl:緑泥石,Fs:長石類,Qz:石英 泥質ホルンフェルス中に斑状変晶をなす菫青石は後退変成作用の際,結晶外縁部は周囲のアルカリ長石などのKと反応して白雲母化(干渉色が高い)しやすいが,結晶内部は周囲からのKの供給が乏しく緑泥石化(干渉色が低い)していく傾向がある。 |
パイロ変成岩(ブッカイト)中の菫青石 Cod:菫青石 泥質岩〜砂質岩の岩片が約1000℃の安山岩マグマに取り込まれ,変成したパイロ変成岩(ブッカイト)中に見られる菫青石。斜方晶系の対称を持つドメインが6花弁状の双晶をなしている(消光状態で3つの双晶ドメインが組み合っている。特に右円内のものが明瞭)。菫青石は非常に高温では4面体サイトの6員環のAlとSiが無秩序配列した六方晶系のインド石(6花弁状の双晶はできない)になるが,この画像では意外にもこのような約1000℃の高温条件でも斜方晶系の菫青石が生じているのがわかる。 菫青石の周囲は微細なケイ酸アルミニウム鉱物や長石類,溶融ガラスである。 --------------------------------------------------------- 下画像)検鏡試料:玄武岩質安山岩(黒色)に捕獲された径2cmの白色の泥岩起源のパイロ変成岩 |